REPORT
税理士 野口洋司氏・日本政策金融公庫 森氏・茨城県信用保証協会 坂本氏/2020年度第3回 決算書の見方・かんたんな事業計画書のつくり方
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税理士 野口洋司氏・日本政策金融公庫 森氏・茨城県信用保証協会 坂本氏/2020年度第3回 決算書の見方・かんたんな事業計画書のつくり方
専門家による講義や対話、フィールドワークなどを通して、これからの地方での仕事の作り方や働き方のヒントを探すための実践的な学びの場、むすぶしごとLAB.。
2021年度第3回目は、税理士の野口洋司氏、日本政策金融公庫の森氏、茨城県信用保証協会 の坂本氏が登壇。
「会計業務の真の目的は、本来自分への報告で、事業の判断材料」であると税理士の野口洋司氏。決算を行うことで会社の利益や資金状況を把握し、事業継続への対策を行う事が出来るのだと話す。
決算書は、一定期間の経営成績を表す「損益計算書」や財務状態が記された「貸借対照表」「キャッシュ・フロー計算書」等からなる財務諸表で、経営状態を測る指標となるもの。本講義ではそれらの読み解き方と、それらを元に作成される事業計画書の作り方を学ぶ。
損益計算書・変動損益計算書
損益計算書は、収益・費用・利益の3つの要素からなり、事業の一定期間の経営成績を表す。1年間に出た利益が算出されるが、項目の「売上総利益」は売上から仕入を引いて出されるものであり、通常マイナスとなることは少ない為、経営状態を測るには「変動損益計算書」を併用して収支を確認するそうだ。
変動損益計算書は、損益計算書の内容を変動費(材料や商品仕入など。売上が上がれば増える支出)と固定費(家賃などその他の支出)に再分類して計算したもので、売上から変動費を引いた「限界利益」、さらにそこから固定費を引いた「営業利益」と、営業利益から営業外の損益をプラスマイナスした「経常利益」が、チェックしたいポイント。
限界利益が高くなれば営業利益も上がる事が分かる。「どれだけの売上を上げれば、営業利益が上がるか」が算出出来る為、これらから読み取れる情報は経営計画を立てる上での重要な指標となる。
貸借対照表
貸借対照表には、資産と負債の項目があり、資金の使い道と出資元が示されている。個人事業主の場合は元入金、法人の場合は純資産といった自己資金の割合が増えていくのが安定した経営状態を表す指標となるという。
売上によって得た「経常収入」から 事業で支払った「経常支出」を引いた残額で返済や積立を行い自己資金を確保・運用をするのが望ましいとされているそう。
キャッシュ・フロー計算書
上記2つは資金の流れを示す資料であるが、実際の経営では、仕入れと販売のタイミングによっては現金収支にマイナスが出ることがあり、必ずしも会計上の損益と一致はしない事も多い。しかしながら、支払いが滞ると利益がプラスでも会社の経営が立ち行かなくなってしまう事から、上記の他に現金収支を補完する「キャッシュフロー計算書」を作成し、実際のお金の流れを追う必要があるとの事だ。
事業計画書のつくり方
経営計画書(事業計画書)とは、経営の目標に向かってどの様に進んでいるかを計る物差しなのだという。
「まずは経営ビジョンを思い描き、5年後どうなっていたいかを紙に書き出して欲しい」と野口氏。目標は売上増や、借入金の返済、資産を増やす等、事業者によって様々だが、計画を作る事で目標に対しての実績のズレを把握し、精度が高い経営を行うことが出来る様になる。また、金融機関から融資を受ける場合には、審査の際の判断材料として利用される資料となる。
経営計画作成の際はは、創業の場合「5年中期経営計画」と「1年短期経営計画」を立てる。まず5年中期経営計画を作成し、計画を細かく割り振りながら1年短期経営計画を作るのがおすすめとのことだ。作成には、既存事業者の場合、決算書の過去の実績を元に計画を進めるが、決算書の無い創業事業者の場合は、資産の5年分の償却予定書や借り入れの返済予定書を用意して作成する。
売上と支出、借入金の返済計画などが主たる内容で、売上を伸ばす、保持するなどの計画の他、借入金返済のペースなども盛り込む。野田氏からは、利率や保証人・保証協会の有無を書いておくと将来借り換えする際の利率比較などに役立つとのアドバイスも頂いた。
目標や過去の成績から経営計画の内容を精査する過程で、試算の営業利益が少なければ売上増・仕入れの減額・固定費の見直し等を、資金繰りに問題があることが分かれば、借り換え等で返済金額を減らし返済計画を伸ばす等の経営見直しを行い作成を進める。野口氏が「決算は自身のため」と話したのはこの為だ。経営計画を作成することで、経営戦略や対策が練られ、安定した事業継続を確かなものとする事が出来る。
これらが、決算書の見方と、それを元に行われる経営計画の作成についての講義であるが、得た情報や計画書を基に「その後行動すること」が何よりも大切だと野口氏は続ける。また、経営計画作成では利益に注目しがちだが、「利益の結果として、資金をどう回すかの視点も重要視して欲しい」とも語った。