お知らせNEWS

REPORT

日本政策金融公庫・九里実氏、茨城県信用保証協会・萩谷良彦氏、アルト経営パートナー株式会社・加藤敦子氏/実践的な創業計画の策定について

REPORT

日本政策金融公庫・九里実氏、茨城県信用保証協会・萩谷良彦氏、アルト経営パートナー株式会社・加藤敦子氏/実践的な創業計画の策定について

日本政策金融公庫・九里実氏、茨城県信用保証協会・萩谷良彦氏、アルト経営パートナー株式会社・加藤敦子氏/実践的な創業計画の策定について

むすぶしごとLAB.は、第一線で活躍する経営者や専門家をお招きして自分らしい仕事のつくり方や働き方のヒントを探る実践的な学びと交流の場です。2023年度の第2回の講座では、日本政策金融公庫の九里実氏、茨城県信用保証協会の萩谷良彦氏、アルト経営パートナー株式会社で中小企業診断士の加藤敦子氏にご登壇いただきました。

 

日本政策金融公庫 九里実氏

日本政策金融公庫は、主に小規模事業者に対し融資する公的金融機関です。融資先は119万先に上ります。また特徴の一つとし、銀行や信用組合といった民間金融機関を補完して事業者の資金調達をサポートしています。

創業融資は近年拡大しおり、昨年は事業を開始して1年以内の利用者は約2万5500人に上ります。また、新型コロナウイルスの流行で創業を控える動きが見られましたが、回復傾向にあるそうです。

このほか創業支援として、全国152ヶ所にある支店に設置した相談窓口や市町村、商工会議所・商工会、金融機関、公庫などと連携したセミナー開催や相談支援などを展開しています。また、事業を引き継ぎたい人と後継者を求めている事業者をマッチングする事業承継の支援も展開。令和4年度の申し込み実績は4874件に上ります。ホームページや公式LINEでも、お役立ち情報を発信しています。九里氏は「借入を検討している方はお気軽に相談してください」と呼び掛けました。

 

茨城県信用保証協会 萩谷良彦氏

信用保証協会は信用保証業界法に基づいて設立された公的機関です。中小企業が金融機関から融資を受ける際、金融機関の保証人となることで「中小企業がお金が借りやすくなる」(萩谷氏)よう支援しています。保証業界を利用する茨城県内の中小企業は全体の約45%に上り、広く使われています。保証協会は、企業が何らかの事情で融資を返済できなくなってしまった場合、代わりに返済する役割を果たします。このこのにより、金融機関は融資をしやすくなっています。

創業者向けの保証制度としては、「茨城県創業支援融資」「茨城県女性若者障害者創業支援融資」の2種類の制度を利用した融資を展開しています。また、創業支援として、セミナーや相談窓口の設置、創業計画の作成支援を実施しています。創業後も協会職員に定期的な訪問のほか外部専門家と連携した経営課題の解決支援なども行っています。萩谷さんは「県の制度は非常に創業者の方にとって利用しやすい融資制度になっています。お客様に応じた支援メニューもありますのでご利用ください」と語った。

 

アルト経営パートナー 加藤敦子氏

創業者のミッションは事業継続

加藤氏はIT企業で勤めながら中小企業診断士の資格を取得し独立。中小企業診断士としてセミナーなどを展開する傍ら、ビジネス相談窓口で数々の相談を受けてきました。講座では、相談窓口で創業希望者や創業者の方々と会話を重ねてきた経験を踏まえ、事業継続のための準備や事業計画書を作成する際のポイントを解説いただきました。

加藤氏がまず強調したのは、事業を継続する難しさでした。

加藤氏によると、創業するための主な手続きは「個人事業主では税務署へ開業届を提出すること」「法人設立では資本金を用意した上で法務局へ登記すること」と難しくはありません。しかし、設立から10年続く会社は全体の約1割と言われているそうです。
このことから「創業される方のミッションは事業を続けること」と強調しました。

加藤氏はこれまで受けたビジネス相談を踏まえ、事業の継続が難しい創業者の傾向として「思いと理想があまりない」「自己資金がないまま事業を始める」「客観的な見方や分析をしていない」「創業計画が立てられない」の4つの特徴を挙げました。

一つ目の傾向について、「なんとなく(この分野であれば)やりやすいと思って」「よく売れるものを扱おうと思う」など思いや理想に基づかない場合は創業や事業継続は難しいと説明。「思いを持っていらっしゃる方は、困難があってもご自身で何とかしようとする」と話しました。
また、経営者として大切な3つのものとして「経営理念」「ビジョン」「経営資源」を紹介しました。

二つ目として「自己資金がないまま事業を始める」ことのリスクについて解説。東京商工会議所が創業して6ヶ月以上五年未満の経営者約600人に対して実施したアンケート調査(2014年)によると、一番苦労したことで多くの回答者の答えが「資金調達」だったそうです。

「やはり自己資金を用意するのは大前提になる」と加藤氏は強調。外部の人からきちんと自己資金を持っていると見られるのは、その事業をやるためにコツコツと貯められたお金」と指摘しました。さらに、足りない資金は金融機関などから借りる場合の際のポイントとして、借入れしたい金額に対する自己資金の割合が少なくとも3対1になることが望ましいと呼び掛けました。

三つ目の傾向として挙げた「客観的な見方や分析をしていない」について、価格設定やサービス内容について同業者に対する調査が不十分な事例を紹介。「周りが見えていないと、自分の提供しているものの価値があるのかどうか判断できない」と述べました。分析方法として「SWOT(スウォット)分析」を紹介しました。
加藤氏は「自分自身や周りの環境を冷静に見つめ直し、どこを伸ばしたいか、どこは注意しなくてはいけないか分析できるようになる必要がある」とアドバイスしました。

四つ目の傾向は「創業計画が立てられない」こと。加藤氏は創業計画について「勤め先を辞めて創業する際はやはり不安です。この不安を払拭するために作るもの」と強調。計画を立てるの効果として、創業までの段取りや調達すべきもの、必要な許認可を把握できることが挙げられます。

「創業への思いに対して冷静に向き合う。どんな使命感を持っているのか、そのための資源や環境はあるのかなどを調査をして計画を作ってみてください。そうすることで『私はビジネスをやっていくんだ』という覚悟が決まり、周囲を巻き込んでいけます。この計画が融資を生み出すことや、補助金にチャレンジすることを可能にします」

金融機関納得できる思いや根拠で創業計画を

創業計画書の作成のポイントについても紹介しました。「創業計画書を見せる相手として可能性が高いのは金融機関」と加藤氏。金融機関に提出することを前提とした文章作りの重要性を訴えました。

「相手を納得させられる明確な創業ストーリーやバックグラウンドをしっかり見せられることが大切」とし、金融機関や銀行の融資担当者を納得させる書き方として「エモさ」だけでは不十分と指摘。「飲食店であれば、席数に対して何回転するのか、時間や休日、平日分けて考える。そうやって計算を積み上げた根拠を示す。それからご自身の業務経験や資格といった強みをアピールする」と根拠を示していく重要性を伝えました。

また、創業計画書に記入する事業概要やコンセプトについては「やりたいことについてパッとイメージできるようにするのが一番大事。誰に、何を、どのようにを常に意識する。そして提供する中でお客様の望む価値を与えられているかも意識すること」と語りました。

お客様の定着方法については、「最初はとになく方法を出していき、効果があると感じるものに優先順位をつけていく。これは試行錯誤で良いです」とアドバイスした。このほか、事業をスタートした際にサポートしてくれる人脈や調達、仕入れ先の計画などの重要性も解説しました。

さらに必要な計画として、創業までに必要な資金に関する「資金計画」と稼働し始めてからかかる資金に関する「収支計画」を紹介。ポイントとして、「設備資金さえ調達できれば創業できるわけではない。運転資金を3ヶ月から6ヶ月確保した状態でスタートするのが一番おすすめ」と話しました。

また、決算書で重要なポイントは、営業利益が黒字で続けていけるかどうかだそうです。加藤氏によると、会社が倒産する一番多い原因は「赤字ではなく、支払うべき時に支払うべき現金がないこと」。手元に現金もしくは直ぐに換金できるものがあるのかどうか注意が必要と呼び掛けました。

「お金の面は甘くみてはいけない。まずは事業計画を作っていただいてから資金計画と収支計画も作っていただくことで、創業したビジネスを安定に作り上げていくことがきでます」とエールを送った。