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ジェリー鵜飼氏/活躍の場を広げる「遊び」、好きへの追求が未来の仕事に

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ジェリー鵜飼氏/活躍の場を広げる「遊び」、好きへの追求が未来の仕事に

ジェリー鵜飼氏/活躍の場を広げる「遊び」、好きへの追求が未来の仕事に

むすぶ しごと LAB.は、第一線で活躍する経営者や専門家をお招きして自分らしい仕事のつくり方や働き方のヒントを探る実践的な学びと交流の場です。2023年の第5回の講座では、イラストレーター、アートディレクターとして活躍するジェリー鵜飼さんにご登壇いただきました。

鵜飼さんはアウトドアやファッションブランド、ミュージックシーンなど様々な分野のクリエイトに携わり活躍していらっしゃいます。講座では、自分の好きを仕事にすることやセルフプロモーションとして取り組んできたことをお伺いしました。

 

手作りのCDジャケットで営業

鵜飼さんがイラストやデザインに興味を持ったきっかけは、子ども時代に聴いていたレコードのジャケットだったそうです。漫画やゲームは購入しない教育方針の中で育った鵜飼さん。自宅では、レコードを聴くことが唯一許されていたと言います。この環境が音楽への関心も深めました。また、自宅で漫画などがなかなか読めない中、本屋で手に取った漫画「AKIRA」などの出会いも絵を描いて働く将来像に大きく影響。その後、日本大学芸術学部への進学に繋がりました。

大学に在学していたころ、国内ではバブル崩壊の影響で学生たちは「就職氷河期」に見舞われていました。鵜飼さんは在学時に卒業後はイラストレーターとしての活動を開始することを決意。卒業後、大学の先輩から仕事を紹介してもらう形でイラストレーターとしてのキャリアを歩み始めたそうです。

「やっぱり不安だった。家賃が払えるなら食事はなんでも良いという生活をしていて。でも兎に角やってみよう、ダメだったら何か考えようという感じだった」

当時はインターネットが普及していない時代で、自分の絵を掲載したいと思う雑誌の奥付けにある電話番号を見ながら電話機の前に座り、営業の電話を掛けていたといいます。鵜飼さんは「胃が痛くなるくらい、絵を描くのが楽しいか分からなくなるくらい辛かった」と当時を振り返ります。

そんな鵜飼さんの転機となったのは、アルバイト先でも営業を始めたことでした。そのバイト先はテレビや雑誌、音楽業界で働く人たちが訪れるバーだったと言います。鵜飼さんはバーのオーナーの許可を得て、お酒を提供しながら「実は僕、絵を描いています。見てください」と自身の作品をお客さんに見せました。

「何も考えずに絵を見せていたわけではなく『自分はこんな仕事がしたい』だとか自分の趣味、自分の強みを伝えるようにしていました」

購入したMacで作成したDCジャケットを、実際にプラスチックのCDケースに挿入して音楽業界の客に見せていたそうです。そうしているうちに、レコードのレーベル会社からCDジャケットの塩とが舞い込みました。そこから鵜飼さんは仕事の幅を広げて行くこととなります。

 

コンプレックスが強みに

「僕は断るのが苦手で、そのことに苦労したり悩んだりした時期がありました。でもそれが自分の強みだって気づいたんです」

クライアントからの提案や修正に対して、断るのではなく前向きに受け入れる姿勢を続けてきた鵜飼さん。このことについて、アーティストらしさがないように感じて悩んでいたこともあるそうです。しかし、この「クライアントのことを考え、売れるものを作ろう」と動けることが自身の才能で長く仕事を続けられる秘訣だと気づいたと語ります。

「折れてしまう自分がストレスで嫌だったけれど、途中でそれを強みだと思ったらすごい楽になった」

目標にする人物に向かって変化していこうとすることについて、鵜飼さんは「若いときは元気だからかっ飛ばしていけるんだけど、自分に嘘をつき続けていくうちに辛くなっていく」と指摘。変えられる自己と変えられない自己を認識し、心が折れないようにすることも大切と訴えます。

また、ストレスを抱え過ぎず、自分のことは自分で守る大切さについても説明。「ストレスが溜まったり元気が無かったりすると、どんどん落ちて良いアイデアが浮かばず、悪いアイデアから抜け出せなくなる。だから弱くなっているときは自分が自分の物凄い応援団になるようにしています」と話ました。

 

誰にも負けないくらい好きになる


「イラストレーターの素質というものはないと思っています」と鵜飼さんは語ります。ただ、大切なこととして「発表する勇気」を挙げました。また、「発表する勇気」に加えて大切なこととして「興味があるもの、趣味に対しては、周りの仲間に負けないぐらい好きになること」も強調しました。

鵜飼さんはアウトドアに関わる仕事にも多く携わっていらっしゃいます。しかし、それらの仕事を得るためにしたことは営業ではなく、趣味としてその分野に没頭することだったそうです。

「『本当に山に好きで行っている人に仕事を頼みたいんです』って仕事の話がきました。自分の好きなものをジャンルとして突き詰めてそれをお客さんにも共有してもらうことは、自己肯定してもらえていることでもあるので、こんなに原動力になることはない」

 

自分の未来をつくる「遊び」

「45歳あたり、娘が生まれたあたりから、『遊ぶ』っていうのも一つの自分にとっては仕事と同じくらい大切なことと位置付けて意識的に遊んでいます」と鵜飼さんは語ります。「この遊びが自分の未来をつくるんじゃないかと思っています」と60代、70代になっても働き続ける将来を見据えていました。

インターネットの普及による情報化社会やChatGPTの登場、AIの発展などでクリエーターの仕事も変化が見られます。しかし、鵜飼さんの好きなものを追求していく姿勢は変わりません。

「イラストの仕事がこれからどうなっていくかは想像がつなかい。そんな中で今後挑戦したいのは、新しいことをやるというよりも、(これまでやってきたことを)どこまでやり続けたいんだということ。高校生のときにコピー機で作ってたZINみたいなものを手売りするとか、そういうこともやってみたい」