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SUKISHA氏/自分も周りの人もハッピーにする、ビジネス視点の重要性

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SUKISHA氏/自分も周りの人もハッピーにする、ビジネス視点の重要性

SUKISHA氏/自分も周りの人もハッピーにする、ビジネス視点の重要性

むすぶしごとLAB.は第一線で活躍する経営者や専門家をお招きし、地方での仕事の作り方や働き方のヒントを探すための実践的な学びと交流の場です。2023年度第1回目の講座では、ミュージシャンのSUKISHAさんにご登壇いただきました。

SUKISHAさんは、2013年に音楽活動を開始して以来、シンガー・トラックメイカーとして数多くの楽曲を制作されています。2018年には音楽クラウドファンディングサイトで制作費を募り、ファーストミニアルバム「Segment of Cakes」をリリース。オリジナル曲だけでなく楽曲アレンジメントでも、アーティストやプロデューサーから高い評価を得ています。

今回は、SUKISHAさんが音楽レーベルに所属せずにインディペンデントのミュージシャンとして活動されている経緯や、音楽活動を生業にするうえで大切にしていることなどを語っていただきました。

周りから求められる音楽ができるまで

SUKISHAさんは、幼少期にクラシックピアノを習い、高校時代になると軽音学部に入り、ベースを独学で習得。その後、ドラムなど他の楽器も次々と演奏できるようになったと言います。ミュージシャンを志したのは、思春期を経済的に不安定な家庭環境で過ごした影響が大きいと言います。

「高校生の頃は、あまり真面目に学校に通えずにいたので、音楽が本当に唯一の楽しみでした。思春期は自分のアイデンティティについて迷っている時期でもありましたし、音楽で、自分が生きた証しを残したいという思いが生まれたんです。自分が他の人よりも早くうまくできる得意なことと言えば、間違いなく楽器演奏だろうという意識があったので、音楽こそが自身の存在意義なのではないかと感じました」

大学卒業後は正社員として企業に就職することなく、フリーターの時期を経て、音楽活動に専念する道を選びました。そして27歳から本格的に音楽活動を開始。
オリジナル曲を作り始めましたが、暗いテイストの曲ばかりを作っていたことと、人前で演奏することが苦手で、多くのミュージシャンが活動の中心にしていたライブハウスでの出演にもためらいがあったと言います。

「活動を始めてもしばらくは曲を披露する方法について悩んで、くすぶっていましたね。ある時、自分の作品を聞き返して、ふと自分だけで試行錯誤していても何も始まらないと気づきました。それで、他の人に聞いてもらってどのような評価をもらえるのか試してみたいと思いました。生活資金がままならない時期だったこともあって、他の人に受け入れられてビジネスとして成功する音楽を作るには、どうしたらいいか考えるようになりました」

自分の信念を貫く姿勢と同じくらい、他の人からの意見を取り入れる重要性を実感しているそうで、得意分野以外では専門家や友人の意見を参考にしていると言います。

「私の音楽が初めて話題になったのは、流行に敏感な友人からのアドバイスで、大ヒット中のアニメソングをカバーした時でした。
その経験を踏まえて、自分が好きな音楽と世間で流行っている音楽とのバランスを考える用になってから、評価が急上昇しましたね」

カバー曲がネット上で大きな反響を呼んだことをきっかけに、その後、少しずつSUKISHAさんの作品は広まっていきました。環境の変化に戸惑いながらも、第1作目のミニアルバムの制作資金をクラウドファンディングで募り、当時最速記録で成功。
仕事の依頼も安定するようになり、現在の音楽活動は多岐にわたっています。

アーティストだからこそ、大事な「お金の話」

SUKISHAさんは日頃から流行っているものなどを観察し、それらがなぜ多くの人に受け入れられるのかを分析して、音楽作りに役立てているそうです。
「自分が良いと思うもの、作った音楽が結果として、周りの人々の気持ちを明るくし、幸せな人を増やせるのが理想」としながらも、それだけでは商売は成り立たないことにも気がついたと言います。

「色々なビジネスに通ずることだと思うのですが、革新的に新しいものを開発できなくても、既存の物事を独自の視点で解釈して発表することで、そこに面白さや斬新さが生み出されて、多くの人に受け入れられていくということは多いと思います。私が音楽を作る時も同じで、音楽業界に限らず、他の成功しているコンテンツや流行の物事を観察して、自分の作品を振り返り、比較しながら改善していくようにしていますね」

また、SUKISHAさんは、自身の収入の実態をSNSで公開したことでも話題になりました。お金関係の話は、特にアーティストは控えるべきだという考え方が根深く存在する一方で、実際に生きていくのにお金が不可欠であると力強く語りました。

「音楽では稼げないと思っている人が圧倒的に多いなかで、音楽でも生計を立てられるということを示していきたいと思い、収入を公開しました。世間に流布している厳しいイメージだけではなくて、良い面も知ってもらい、音楽業界を志す人が増えることに繋がればいいなと思っています」

学校教育ではあまり学ぶことがないビジネスについて知識。好きなことを続けていくために、ビジネスの基礎的な知識や資金運用の方法を知っていることは大事な力になると語りました。

音楽という大きな文化のなかで仕事を続けていく

今後の展開について尋ねられると、SUKISHAさんは、インディペンデントで音楽活動を続けることの難しさに言及しながら「やりたいことは無限にあります」と笑顔で語りました。
自身の音楽をより多くの人々に聴いてもらうため、準備を整えたうえでレーベルや会社に所属するメリットも認識しているそうです。

「これまではインディペンデントとして活動してきましたが、新しいことに挑戦するために、レーベルに所属することも考えています。ただ芸事の世界では古い商慣習が残っていることも少なくありません。アーティストと事務所とで、パワーバランスが不均衡な場合もあります。これからも活動の方法を模索しながら、長い目で見たときに後続のミュージシャンが活動しやすい環境づくりに繋がるような作品づくりをしていきたいです」