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SEASON2第3回「地方で創業する人と応援する人のいい関係づくり」セミナーレポート

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SEASON2第3回「地方で創業する人と応援する人のいい関係づくり」セミナーレポート

SEASON2第3回「地方で創業する人と応援する人のいい関係づくり」セミナーレポート

SEASON2第3回「地方で創業する人と応援する人のいい関係づくり」セミナーレポート

2017年2月4日、茨城県結城市の「旧会津屋呉服店」にて、むすぶしごとLAB.SEASON2の第3回セミナー「地方で創業する人と応援する人のいい関係づくり」が行われました。

今回は、地方でのこれからの働き方や暮らし方、皆で一緒に創りだすコミュニティの作り方について様々な事例から学んでいきました。

 

今回の登壇者

第3回セミナーでは、異なる立場から地方に関わっている三名からお話を伺いました。

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宮下直樹(みやした・なおき)

Terminal81 Film キュレーター

株式会社博報堂でのアカウントプロデュース職を経て、2006年に独立。故郷である京都と東京を行き来しながら、着物をはじめとする伝統文化・工芸の活性に独自の視点で取り組む。現在は台北も活動の場に加えつつ、写真・映像表現を入り口としたクライアントのブランディングや商材のプロモーション、台北のプロダクトデザイナーと京都の職人とのコラボレーション、日本文化のアーカイブや地域の魅力の掘り起こしなどを手掛ける。

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山本真由子(やまもと・まゆこ)

株式会社ルミネ 海外・新規事業プロジェクト

1982年生まれ、神奈川県大和市出身。上智大学を卒業後、株式会社ルミネへ入社。ルミネ各店の営業部を経験した後、ルミネ有楽町の開業準備室・ルミネ有楽町店での勤務を経て、ルミネ本社へ異動。2016年3月より海外・新規事業プロジェクトに所属。4月15日にオープンしたJR新宿駅直結の商業施設『NEWoMan』エキナカ「ココルミネストア」のプロデュース事業に従事。年間のプロモーション計画や新規商材開拓などを行っている。

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小野裕之(おの・ひろゆき)

greenz.jp プロデューサー NPOグリーンズ 事業統括理事

1984年岡山県生まれ。中央大学総合政策学部卒業後は大手企業のウェブサイトなどを制作するベンチャー企業に就職。その後、greenz.jpに参画し、現在はNPOグリーンズの事業戦略づくり、企業や行政に向けた事業の開発や営業、オペレーションの責任者。また新規事業のインキュベーション等を担当。SIRI SIRI LLC. 共同代表。九州工業大学大学院非常勤講師(ストックデザイン&マネジメント)。

 

SEASON2の第3回セミナーについて

司会進行は、おなじみマチヅクリ・ラボラトリーの村瀬正尊(むらせ・まさたか)氏。

三名の講師それぞれの「地方」「地域」に対するアプローチを伺っていきました。

本セミナーの内容も、村瀬氏から講師たちに投げかけられた質問とその答えを簡潔にまとめてレポートにしていきたいと思います。

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様々な地域に出向きいろいろな人に会ってきたと思いますが、ご自身の仕事の中で、「関わってみたい」と思えるモノ・人・地域の特徴は?

山本氏

「こういう人だったらいっしょにやりたいな」と思うのが、自分たちの課題をちゃんと理解して「どうにかしないと」と思っている人。

(地域でかかわる人たちには、)自分たちの地域やモノづくりに対して、「課題を持ってどうにかしたい」「でもそのアイディアがない」「話し合いながらやりたい」と思っていただければいいなと思います。

ルミネと地方の間にはまだ一方通行な部分もあり、下手をすると、プロジェクトに関して「ルミネさんで全部お願いします」となってしまう可能性もあるのだそうです。

 

宮下氏

山田錦(酒米)や杉原(和紙)を地域の背景として持つ、兵庫県多可町(たかちょう)でのお仕事を例として話してくださる中で、

地域で問題になっていることをどうにかしてください、街の知名度を上げてください、という前に、(地域の背景を)遡って愛せるか、ということが大切。

と、おっしゃっていました。

 

小野氏

小野氏は、起業・自治体・起業家などが新しい事業を作っていく際の、各団体の糊付け役としての役割を担うことが多いのだそうです。

様々な仕事づくりを見てきた経験から、

「地方ではこういうことが評価されやすいっぽいので当ててみました」という感じだと信頼できなくて。

自分はこの地域の何を愛しているのか、というのと、自分の能力との接点とをきっちりと見つけ出すということをやっている人が、基本的に仕事では信頼できる。

と、のことです。

 

地方で活動する人たちのなかで「この人は飛びぬけているな」「この活動はすごいな」と思えるものがあったら教えてください。

山本氏

素敵だなと思ったのが、「盛岡の『裂き織り』という伝統工芸をちゃんとした産業にしていこう」という取り組み。

支援施設の子供たちに裂き織りを教え、子供たちが卒業するとその仕事に就くことができる。そうすることで雇用を作り、生産問題も解決できる。また、裂き織りの材料となる生地は、岡山のデニム工場やアパレルメーカーと提携して端材を提供してもらうことで、産業として割き織りを製造していける、とのこと。

東京地方関係なく、伝統産業・地場産業を広い視点で考えられているなと思うのが、群馬の桐生市にある株式会社笠盛(かさもり)というところの、000(トリプル・オゥ)というアクセサリーブランド。

笠盛は明治10に創業した、着物の帯の刺繍専門の会社。和装文化が廃れ工場が小さくなっていったときに、桐生の外から来た人に「こんな素晴らしい技術があるなら、もっといろいろできるはず」という提案をもらい、アクセサリーを作ることになったそうです。

 伝統・歴史・文化で行き詰まっていた人たちが、新しい風をもらった時に「いいね」と思えるのは結構勇気がいることだと思います。

 

宮下氏

兵庫県多可町に、一日1,500本から2,000本ぐらいの、ほんとに美味しい手巻き寿司を売っているパワフルおばちゃんがいます。

節分前には、なんと一日に約12,000本売れるそうです。

パワフルな、苦労をいい意味でしてきて、モノづくりの情熱と実行力がある人なんですね。おばちゃん仲間とか、地元で仕事が見つからない人たちとか、精神的につらい思いしてきた人たちとかの再生工場的な感じもありながらやっている。

また、京都府伊根町の例もお話いただきました。

京都の伊根町だと、民宿一棟貸しに、完全に付き添って観光案内するというサービスを加え、そこに20,000円以上の値をつけていた人がいました。最初は白い目で見られていたけど、結局ファンがついて常連がついて、各国から旅行客がきて、それがどんどん街の中に広がっていきました。

 

小野氏

結局やることは、革命的な技術を開発するとかものすごい投資を集めてくることじゃなくて、自分たちの足元を見直すっていうすごくシンプルなことをやったのちに、今のマーケットに合わせて編集しなおす、っていうことを丁寧にやる、ということ。しぶとくマーケットをみつけて、じわりじわりと売り上げを伸ばしていくということだけなんですよね。

従業員としての優秀と、経営者としての優秀は質が違う。経営者としての、従業員だったら普通はやらないようなリスクの犯し方、チャンスの得かた、多少白い目で見られる、出る杭と呼ばれる、そういうことを厭わないということが、結果として地域のために絶対なる。

 

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地方で活動を続けていくには大変な部分もあります。それを、心を折らずに乗り越えていくにはどうしたらいいですか?

山本氏

ココルミネプロジェクトは、日本のモノづくりの素晴らしさを伝える、文化発信・支援のプロジェクト。これをやることになったときには、山本氏は業務命令とは感じず「すごく面白いことをやるんだな」と思ったそうです。

ココルミネプロジェクトは楽しいですが、実際の業務の中では、職人さんに怒られたりしながら何回もバキバキ折れていたりします。お客様と直接かかわることが多いから続けられる、というのはあり、ダイレクトにお客様の気持ちとか感情を感じ取ることができる仕事だなと思っています。

プロジェクトを通して新しい経験と体験を得て、それがルミネの事業に還元できるなら、仕事がより楽しくなっていくのでは、ともおっしゃっていました。

 

宮下氏

ピンで頑張るのはなかなかしんどいと思います。地域には、この地域をなんとかしたい、という人は必ずいるので、そういう人を見つけあい、お互いの役割を確認しながらタッグを組んでいくのが大事。

地方で信頼できる人を行政も探している。それに値する人間として、自分がその役割を担えるようなモチベーション・ミッションを持つことが一番大きいかな。

 

小野氏

早く成果を出そうと思って燃え尽きるのは子供のやること。5年10年かけてでもやりたいことを、いま始める。形は変わってもいいので、目的は変えずに腰を据えてじっくりやってみること。

自分の探求心に火がついているかどうかの検証をする。趣味とは別の「好き」という感じ。興味が尽きないというか、ずっと気になっちゃうというか。気になるものがあったら、それに向き合ってみて、「時間がかかるものだ」とあきらめて、自分のミッションとして「これが世の中の未来になったらいいな」ということをじっくりとやる。

 

セミナー参加者からの質問:活動のヒントとなっている本はありますか?

 山本氏

マイケル・サンデル氏の『それをお金で買いますか』。「何にお金を投じるのか」というのがお客様の中で変わってきているので、これを読んだときにいろいろ考える部分がありました。

 

宮下氏

独立を考えていたときに、アラスカのパイプラインを撮り続けた写真家の本に出会いました。こういうことをやり続ける人がいるなら、自分も生きていけるんじゃないかな、と思いました。

 

小野氏

大学生の時に読んだ、西村佳哲(にしむら・よしあき)さんの『自分の仕事をつくる』という本。西村さんの本の中に紹介されている「表現したい人の周りには必ず小さなマーケットが存在している」という言葉があって、「表現したい」ということの根本には、「もっとこうなったほうがいい」という願いがあり、それを実現したいと思えばマーケットになるんだろうなと思いました。

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まとめ

以上、むすぶしごとLAB.SEASON2第3回セミナーのレポートでした。

地方で何らかの取り組みをしたいと考えている人の中には、「とにかく活動したい!」「早く結果を出したい!」という気持ちはあると思います。

しかし、登壇者のお話を伺っている中で、「地方で創業したり、活動を行ったりする際は、目的意識を持ち、自分の役割を見つけ、課題に対し腰を据えてじっくりと取り組んでいくことで、ともに活動する仲間や信頼し応援してくれる人が現れるのではないか」と思いました。

そうすることで、地方で創業する人と応援する人のいい関係が作られ、より良い地域が生まれるのではないでしょうか。

(取材・撮影・レポート:佐野匠)