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Lee Izumida氏/好きなことを仕事にする

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Lee Izumida氏/好きなことを仕事にする

Lee Izumida氏/好きなことを仕事にする

むすぶしごとLAB.は第一線で活躍する経営者や専門家をお招きし、地方での仕事の作り方や働き方のヒントを探すための実践的な学びと交流の場です。2022年度第4回目の講座では、絵描きのLee Izumidaさんにご登壇いただきました。
Leeさんはフリーランスの絵描きとして活動中で、主にアクリル絵の具を使った作品を発表されています。

個人事業主は、株式会社や合同会社などの法人に比べて、少ない手続で開業が可能。その分初期費用を抑えることもできますが、個人事業主と法人とでは、開業後のメリット・デメリットが異なります。

今回は、一人の個人事業主としての仕事のありかたについて、Lee Izumidaさんに話を伺いました。

職業としての絵描きとは

Leeさんはカンバスを使った作品をはじめ、ショップのウインドウや看板、宣伝美術に用いられる絵を手がけています。また、ファッション・コスメブランドとのコラボレーション作品も多数発表。

他にも、中学生までを対象にしたキッズワークショップを定期的に開催中。使用するのは絵の具など画材に加えて、空き瓶や段ボール、小麦粉の袋など。
Leeさんは北海道出身で自然に囲まれて育ったこともあり、以前から環境問題を意識していたと言います。

「ワークショップではサステナブルな方法を積極的に取り入れようとしています。例えば、空き瓶をペイントして花瓶やインテリアとして生まれ変わらせるなど。アップサイクル(不用品を別のものにアップグレードする)は、実は簡単に体験することができます。これからも楽しみながら環境問題に触れていきたいですね」

このようにフリーランスの絵描きとして飛躍を続けている背景にあるのは、地道に続けてきた活動。独立する以前から年に一度個展を開催するなど、継続的な活動を続けてきたのだそうです。

「個展は18歳の時から何らかの形で欠かさずに続けています。ときには絵が一枚も売れなかったこともあるし、そもそもお客さんすら来なかったこともありました。個展を始めた当初から、私にとって個展はその年1年間でどんなことを考えてきたかを発表する機会。そこでお客さんと直接やりとりができて、リアクションが見られるのはうれしいですね。絵を通して、喜んでもらえたり感動してもらえたりすると、社会の中で役に立てた実感が湧いてきて、絵描きを仕事にして良かったと感じます」

夢の実現のために無駄なことは何もない

Leeさんがフリーランスの絵描きとして独立したのは3年前。以前はアパレルショップの店員として働いていました。そこでの接客の経験は、人見知りだったLeeさんが人前に立つことや多くの人と話すことに慣れる大きな助けになったそう。

ショップのウインドウに絵を描くときにも経験は活きていて、店内レイアウトの方法を理解しているからこそ、絵そのものだけでなく、配置方法も含めた提案ができるのだそうです。

「無駄かもしれないと思っていたことでも、後々絵描きの仕事につながった例はたくさんあります。私の場合、仕事のご依頼やギャラリーの確保などは、知り合いや友人から声をかけてもらって実現することがとても多いです。それはずっと絵を描き続けて、これからも自分は絵を描いていきたいんだと伝えることで自然と周りに応援してくれる人が増えてきた結果でもあると思いますね。そういった意味では、こつこつ人との繋がりを作ったことでフリーランスとして独立する機運をつかめたのではないかと思います」(Lee氏)

お互いに仕事を上手く進めるために苦手なことを伝える

フリーランスとして独立してから現在までの3年間は、絵描きの仕事の中でも自分の好きなことや向いていること、できないことを把握するつもりで仕事を引き受けてきたと言います。

「失敗も含めて無駄なことはないと思うので、とりあえず何でもやってみようという意気込みでいますね」

ただ依頼の内容によっては、「自分には向いていないな」と事前に判断できる時もあると言います。自分が適任ではないと感じた場合には依頼をいただいたことに誠意を持って、自分ができない理由をしっかり伝えているそうです。

またLeeさんと依頼主の両方が納得して良い仕事ができるよう、作品やLeeさん自身のことを理解してもらってから仕事を引き受けていると語りました。

「フリーランスは、事務所に所属するよりも社会的信頼度は低いなと感じます。特に大手企業との仕事やコンペティションからの受注はしにくいし、ときにはあまり好ましくない扱いを受けることもあります。だからこそSNSなどを通じて自分の発想や個性を発信したり、新規のお客様には自分が苦手なこと、できないことを事前にしっかり伝えるようにしています」

これからも好きな絵を描き続けていくために

「絵描きとして一番大事にしているのは絵を嫌いにならないこと。おばあちゃんになるまで絵を描き続けるのが目標です。」と語るLeeさん。幼い頃から絵を描くのが好きで、絵から離れた時期はないと言います。

「今は良い調子で仕事ができていますが、また売れなくなっても絵をやめない自信があります。売れない時期は長かったし、作品を否定されたこともあります。それでも私は絵が好きで、絵は私の生活そのもの。たとえ否定されたとしても『その人の意見にすぎない』と割り切って、自分の意思や好きなことを貫くメンタリティはフリーランスで仕事を続けていく上でも強みになると思いますね」と参加者にエールを送りました。

またフリーランスの絵描きとして活動しながら、日本でのアーティストの立ち位置や知名度を上げていきたいとも話しました。

きっかけになったのは、キッズワークショップでの小学生の「将来は絵描きになりたい」という一言。特に日本でのアーティストへの報酬の安さに疑問を感じていると言います。

「海外に出て行かなくても、日本で絵描き一本で生活できるというのを示していきたい。これから絵描きになりたい人のためにも仕事の方法を確立したいですね」と笑顔で語りました。