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SEASON2第1回「つづくお店の作り方 2」セミナーレポート

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SEASON2第1回「つづくお店の作り方 2」セミナーレポート

SEASON2第1回「つづくお店の作り方 2」セミナーレポート

2017年1月22日、むすぶしごとLAB.SEASON2の第2回セミナー「つづくお店のつくりかた2」が行われました。会場は、創作料理店「御料理屋kokyu.」。

今回は、トークイベントを通じて、ロールモデルとなる先輩起業家の方から「地方での仕事の創り方・働き方」というテーマについて学んでいきました。

 

今回の登壇者

登壇していただいたのは、こちらの二名。

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影山知明(かげやま・ともあき)

1973年西国分寺生まれ。大学卒業後、マッキンゼー&カンパニーを経て、ベンチャーキャピタルの創業に参画。その後、株式会社フェスティナレンテとして独立。2008年、西国分寺の生家の地に多世代型シェアハウスのマージュ西国分寺をオープン。その1階に「クルミドコーヒー」を開業。NHKテレビ NEWS WEB の第4期ネットナビゲーター(火曜日担当)も務めた。著書に、「ゆっくり、いそげ ~カフェからはじめる人を手段化しない経済~」(大和書房)。

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風間教司(かざま・きょうじ)

1975年、栃木県鹿沼市出身。大学卒業後、印刷、広告営業職、バーテンダーを経て、自宅を改装しカフェ「饗茶庵」をオープン。他、連れ込み宿、商家、など廃屋をリノベーションしたカフェ「日光珈琲」を展開。珈琲の焙煎、卸をはじめ、カフェコンサルティング、起業支援等を行う。 日光、鹿沼を中心にした商人による地域活性プロジェクト「DANNAVISION」発起人。

 

SEASON2の第1回セミナーについて

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登壇していただくお二人は、カフェ運営を中心に経営をしていますが、影山氏は都心、風間氏は地方、という対照的な環境で店舗運営を続けています。

そんなお二人からは、開業に至る背景、店舗運営の中で大切にしていること、お店を続けていくためには何が必要か、ということを中心にお話いただきました。また、セミナー参加者との質疑応答も行われました。

 

このトークイベントでは、むすぶしごとLAB.のコーディネーター、村瀬正尊(むらせ・まさたか)氏が司会進行を担当。村瀬氏から講師のお二人への問いかけを中心にトークイベントが進められていきました。今回のレポートでは、セミナーまとめの意味も込めて、問いかけとその答えを簡潔に記載していきたいと思います。

 

お店にお客様が来てくれる状況を、どうやって作っていきましたか?

影山氏

お店に来てくださるお客様の数は、「1+1+1+1+1+1+…」を積み上げていってできてくる、ということだと思います。一度来てくれたお客様にまた来たいと思ってもらえるよう全力を注ぐほかない。そこを疎かにして「〇〇という媒体に掲載されたらお客様に来てもらえるかな」と考えるのは本末転倒。

風間氏

まずは自分の友達が来てくれるかどうか、から始めたけど、友達だからって毎日は来てくれない。お店を始めた当初はインターネットも今ほどなかったので、「口コミだろうな」と思い、自分がいいなと思ったお店に個別営業しに行きました。

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お店とお客様との関係づくりをする中で重要だと思うことは?

影山氏

お店をやるなかで一番大切だと思っているのは、最初のお客さんのお迎え。扉を入ってくるお客様を、必ず一旦うけとめる。気持ちをお客様の方に向けて、その時に自分の中から湧いてきた言葉を返す。「その人をきちんと受け止めました」という意味で肉声を伝えられれば、お客様に「ここにいて良いんだ」と思ってもらえる。すると、注文を取るとき、メニューを提供するとき、帰り際など、会話の質が変わってきます。

 

扉を開けた瞬間にお店の人にどう迎えられるかで、お客様の気持ちの開きようが変わってくるとのこと。

 

風間氏

スタッフに言っているのが「お店の人間とお客様という関係から一つ越えよう、人間関係を構築できる間柄になろう」ということ。相手に慣れすぎるのもよくないけど、初めて出会い仲間を作るような感覚でその人に興味を持ち、何か共通点があったらその話をする。うちのスタッフにとってもお客さんにとっても、人生の出会い、きっかけがある。そういうことを大切にしています。

 

お客様との良い関係をしっかり築くことで、仮にお店での失敗があったとしてもそれがお互いにとっていい思い出となりうる、ということもあるそうです。

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店舗運営に必要な人材を育成するために、心がけていることは?

影山氏

社員一人一人と自分との関係を、影響の輪(※)の中とは考えたくなくて。だから、どうしたらお客様に喜んでもらえるかは、定例会でさんざん話すだけ。スタッフたちに「問いを投げかける」「考える場を与える」ということは僕の影響の輪の中にあると思いますが、その先はスタッフひとりひとりに委ねていきます。

10人いたら10人やりかたが違う。でもそれが、一番嘘がないと思っています。何かの型にはめられているのではなく、それぞれのキャラクターを活かした接客をするのが、お客様に信じてもらう最短距離だと思います。

※影響の輪:スティーブン・R・コヴィー氏の著書『七つの習慣』の中に登場する概念。「その人が関心あるもの」を示す「関心の輪」があり、そこに内包されるのが、「その人が直接的または間接的に影響を及ぼすことができるもの」を示す「影響の輪」。

 

風間氏

僕は逆に任せっきり。何か起きた時に謝るのは自分だから、とりあえずスタッフにお任せ。

(影山氏:社長ってクレーム対応係ですから。最後に頭を下げる役。)

スタッフが失敗を経験すれば、「これはいけないことなんだな」とスタッフ自身で分かる。そこから「こうなってはいけないから、先にこうやらなくてはならない」と考えてもらえるようにならないと、こちらからスタッフに対していくら言っても成長させるのは難しい。

スタッフたちに任せておくことで、どんどん成長していってくれる。

 

人材育成を行う上での手段は異なりますが、お二人とも、スタッフの能力や個性を信じて見守っているのだなと思いました。

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今までの経験の中で、「お店を運営するなかで、こういうことをしてはいけない」と思うものは?

影山氏

真っ先に思うのは、「売り上げを目標にしてはいけない」ということ。

 

週目標として「客単価を意識する」ということを掲げた結果、意識しすぎてしまい、「売り上げを上げたい」というスタッフの気持ちがお客様に伝わってしまったそうです。

また、開業後の大きなターニングポイントとして、「事業計画を作るのをやめた」ということがあったそうです。それについての理由は、

 

影山氏

事業計画がはっきりありすぎると、自分を含めた店舗スタッフがそのためにお店を運営することになってしまう。すると、設定目標とは関係ない面白い出会いや出来事がお店の中で日々起こっているのに、それらをキャッチするアンテナがしぼんでしまう。

売り上げを計算していくことは大切だけど、あまりお店の計画を立てすぎないことも大事かな。

 

とのこと。

 

風間氏

なんだかんだ言って大切にしているのは、自分の好きなこと。「好きだな」と思ったら、好きなことをやらないとダメだな、と。好きなことをやっていれば、どうにかしてでもやっていく。嫌いなことを続けていたら、途中で投げ出してしまう。

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地域での店舗運営ならではの考え方はありますか?

風間氏

地方だから、都市部だからというのはあまり関係していなくて、いいお店で求められるものがあれば、どこからでも人は来てくれると思います。「地域で一番のお店になる」という目標もあると思いますが、もっと広い視野でみて「都市部のお店にも敵う素敵なお店」になれれば、それが「地方だからこそ引き立つ」ということになるのかなと思います。

影山氏

気になるお店に偵察に出かけたりすると、だいたい辺鄙なところに店舗があったりします。「辺鄙なところバイアス」というのがあると思います。富士山の山頂で飲むコーヒーが美味しいのと同じで、たどり着くために苦労すると、そこで過ごす時間をいい時間だと思いたくなる。むしろ辺鄙な場所はチャンス。

 

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お二人のお話を伺ったあとは、セミナー参加者との質疑応答も行われました。

 

400回も行ってきたというミーティングは、どんな雰囲気で行われていますか?

クルミドコーヒーでは、週一回のスタッフ定例会を行っており、その回数は400回にものぼっています。

影山氏

400回も繰り返しているとスタッフ同士慣れてきて、お互いの共通言語みたいなものが生まれています。今なら、僕がいなくても「影山さんならこう言いそう」というのがスタッフの中であるし、「でも自分はこう思う」ということを言える信頼関係ができています。また、話し合いで問題解決する、というのが上手くなっていったと思います。

 

チームの中に新しいメンバーが入ってきたときに、うまく溶け込めるように心がけていることは?

影山氏

できるだけ場をフラットにする。声の大きな人、経験の長い人のボリュームをすこし下げさせて、そうでない人のボリュームを少し上げる、ということは意識しています。

カフェの仕事は、居場所があって役割がある。新しく入ってきた人が、居場所がなくて苦しんでいる、というケースは今のところ無いですね。

 

風間氏

新しく入ってきた人を、どうやってスタッフに紹介するか、ですね。既存のスタッフが受け入れやすいように、その人のいい部分を情報として添えて紹介してあげる。あとは、同じ時間を一緒にいることで、自然と雰囲気が作られていきます。

 

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まとめ

以上、むすぶしごとLAB.SEASON2第1回セミナーのレポートでした。

お話を聞いていて、影山氏と風間氏の、「店舗・経営者・スタッフ・客様それぞれの中に生まれる関係性に意識を傾けている」というところが印象に残りました。

売り上げを作ることは店舗運営のなかで重要なこと。しかし、それだけを目標にするのではなく、「カフェ」という一つの空間から生まれる偶然性や、そこから作られる人と人の関係性を大切にしていく。そうすることで、成長しながら長く続くお店を作っていけるのではないでしょうか。
 
(取材・撮影・レポート:佐野匠)