REPORT
SEASON1第5回「ネット×ものづくりで切り拓く新しいマーケット」 セミナーレポート
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SEASON1第5回「ネット×ものづくりで切り拓く新しいマーケット」 セミナーレポート

2016年11月26日、むすぶしごとLAB. SEASON1の第5回セミナーが開催。SEASON1最終回の登壇者は、ライフスタイルアクセント株式会社小林正樹(こばやし・まさき)氏と、株式会社2.5Dの比留間太一(ひるま・たいち)氏。「ネット×ものづくりで切り拓く新しいマーケット」をテーマに、Web展開や販路開拓について学んでいきました。
ライフスタイルアクセント株式会社 小林氏のお話
Factelierについて楽しそうに語ってくださる小林氏。「日本から世界ブランドを作るということをしていますが、私なんか「青春」という感じで仕事をしています」という言葉からも、ブランドへの熱意を感じます。
小林氏の所属する「ライフスタイルアクセント株式会社」は、同社代表の山田敏夫(やまだ・としお)氏が2012年に創業。アパレルブランド「Factelier(ファクトリエ)」を展開しています。
山田氏がフランス留学の際に、GUCCIのディレクターから「日本には本物のブランドがない」 と言われたことが、アパレルブランドFactelierをつくるきっかけのひとつ。そういったこともあり、「日本から世界ブランドをつくる」ということが、ブランドのコンセプトになっているそうです。
Factelierの製品を製造するのは、世界的に有名なブランド製品を製造する、高い技術を持った日本国内の工場ばかり。そして、中間業者を一切挟まず工場とブランドが直接提携することで、顧客に一流の商品を適正な価格で提供することと、工場に適正な利益が生まれることを可能にしています。
商品が手元に届く間もブランドについて知ってもらう機会
話に熱が入りすぎて言葉をど忘れしまうほど熱く語る小林氏。高い技術を持ち一生懸命な工場や職人さんに敬意を払っていることが伝わってきました。
Factelierの製品は、基本的にすべてネット上で販売。フィッティングスペースが銀座をはじめ4店舗ありますが、店内には試着用のサンプルを置くのみで、購入したい場合は店内に置かれたiPadから注文します。
商品を注文すると、購入した商品が手元に届くまで、「注文された商品は、いま製造のどんな工程を経ているか」「その工程はどんな意味があるか」といった、ものづくりのプロセスがメールで送られてくるそうです。
ネットを介したやりとりはドライになりがちなこともありますが、Factelierの場合は、逆に工場の高い技術や職人さんの熱意を知顧客に知ってもらう機会になっているようです。
今回の会場は、結い市でも出展会場として使われる「旧会津屋呉服店」でした。
株式会社2.5D 比留間氏のお話
「日本が死ぬほど好き」と語る比留間氏。幼少期から海外での生活が長き、現地では「マイノリティ」でしたが、「出自が違う人というのはそのコミュニティにない価値観や観点を持っている」という部分で得をしていたとのこと。
比留間氏は、株式会社2.5Dのチーフディレクター。2.5Dは、日本の独自文化であるポップカルチャーを軸に、これからの時代のエンターテイメントを再構築する「カルチャーデザインカンパニー」。
今回のセミナーで主に取り上げられたのは、比留間氏が手掛けた仕事のうちの一つ、PEOPLEAP PROJECTの「7inch -PLATE-」。これは、7インチサイズのレコードとまったく同じ大きさにできた、波佐見焼きのお皿。表面には様々なイラストやデザインが施され、裏面はQRコードが印刷されています。
一種類の7inch -PLATE-を作る上で、イラストレーター、デザイナー、ミュージシャン、映像作家の4組が関わっています。制作にあたっては、それぞれのクリエイター達が話し合いお皿の制作テーマを設定。イラストレーターがテーマに沿ったイラストを提供し、グラフィックデザイナーがお皿とパッケージをデザイン。ミュージシャンが音楽を作り、映像作家はミュージックビデオを作成。
そして、完成したお皿のQRコードをスマートフォンなどで読み込むと、ムービーや音楽を楽しむことができます。これは、今のインターネット技術やスマートフォンの普及があってこそのもの。
これまでに無かった流通経路で展開
7inch -PLATE-と、そのケース。穴の開いたお皿に、グラフィックだけでなく「音楽」「映像」という要素が付加されています。
7inch -PLATE-への参加クリエイターたちの作品である、イラスト、デザイン、音楽、ムービーを日用品である「お皿」に落とし込んだことにより、クリエイターのファンだけでなく、ファン以外の人や、これまでクリエイティブに興味がなかった人に対しても作品を届けることが可能となりました。
たとえば、代官山の蔦屋書店に7inch -PLATE-が置かれたときは、ミュージシャンと映像作家の作品を書店の顧客に届ける機会となりました。音楽の要素があるため、タワーレコードでも大きく展開。「音楽」を探しに来た顧客に対し、音楽以外の要素であるデザイン、イラスト、映像の作家について知ってもらうきっかけにもなりました。
裏面のQRコードを読み込むことで映像や音楽を楽しめます。お皿のデザインと合わせて、楽しく食事の準備ができるかもしれません。
さらに、伊勢丹新宿店では、製品の展示販売だけでなく、店舗内でPEOPLEAP PROJECTに関わるアーティストがライブを行うという、異例の試みも行われたそうです。
販路開拓を考える前に必要なもの
お二人は、結城市の街なかを視察した感想も話してくださいました。
小林氏、比留間氏から、「ネット×ものづくりで切り開く新しいマーケット」をテーマに、インターネットの活用や販路開拓に関するお話をしていただきました。
セミナーの中で、比留間氏は、「ストーリーや思想が薄いものは、インターネットで発信してもあまり広がらない。」「普段の仕事でも、前のめりになってくれたり、やる気があったり、そこに気持ちがある人と一緒じゃないと、そのプロジェクトは絶対に成功しないと思う。」小林氏は、「Factelierは、製品の背景やストーリーを大切にしているブランド」「根底の部分がしっかりしていないと、ネット販売だからといって売れるわけではない。」とおっしゃっていました。
販路開拓を考えるうえでは、まず「ストーリーのあるものづくり」「熱意を持ってものづくりに取り組んでくれるチーム」が重要なのではないでしょうか。
今回のセミナーも、結城市内や近隣地区からの参加者が多くを占めました。ここでのお話も、これからのものづくりや販路開拓のヒントとして、そして地方を盛り上げるヒントとして、少しでも役立てていただければと思います。
(写真・取材・レポート:佐野匠)