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株式会社手紙社代表 北島勲氏/2021年度第1回 自分たちらしく変化できる会社づくり

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株式会社手紙社代表 北島勲氏/2021年度第1回 自分たちらしく変化できる会社づくり

株式会社手紙社代表 北島勲氏/2021年度第1回 自分たちらしく変化できる会社づくり

むすぶしごとLAB.は第一線で活躍する経営者や専門家をお招きし、地方での仕事の作り方や働き方のヒントを探すための実践的な学びと交流の場です。2021年度第1回目の講座では、株式会社手紙社代表の北島勲さんにご登壇いただきました。

手紙社は、イベント・雑貨・カフェを事業の三本柱にして展開する編集チーム。その中で北島さんは「東京蚤の市」や「もみじ市」「紙博」など数々の人気イベントを手掛け、作品との出会いの場を提供してきました。

しかし新型コロナウイルスの影響で、事業の「三本の柱」のうちでも主要事業だったイベントが開催できない状況に。それでも、コロナ禍を経て「より事業の軸ができてきた」と語る北島さんから、事業の本質を活かした経営を模索する方法について伺いました。

自分たちらしく仕事がしたい

元から雑誌が好きだったと話す北島さんは、会社員時代には社内で雑誌を創刊。その後、雑誌で扱った作家を集めてイベントを企画します。これが北島さんにとって初めてのイベント開催でした。

「独立創業するときなど、自分の人生が大きく変わる時は迷うと思います。でもどっちに行っても良いことはあるし、それなりに後悔することもある。だから自分の心に踏ん切りをつけて、どちらか選ぶしかないと自分にいつも言い聞かせるんです」

40歳まで、向いていないと思いながらも会社員をしていた北島さん。独立を意識したときは、自ら創刊に携わった雑誌を手放して良いのか葛藤を抱えていたそう。それでも最後は心の声に従ったと言います。

「結局は、最初に企画したイベントの楽しさ、感動が忘れられず、退社と同時に手紙社を立ち上げました」

独立を後押ししたのは、作り手と一緒に純粋に好きなものを作る世界に行きたい、という北島さんの中にある気持ち。

創業初期は、業務委託を受けながら仕事を続けていたそう。ですが、「手紙社らしい仕事をしたい」という意志の元、業務委託の仕事はしないと決意したそうです。

「自分たちで考え、選んで、仕事を作っていこうと思ったんです。全ての事業をイベント化しながら事業を進めていく方が、自分たちらしく仕事ができると思いました」

手紙社が開催するイベントでは、出展者は公募せず、スタッフが招待したい作家を選んで実際に会いに行く。そこには、「自分たちが選んだ一流の作り手が集まれば、絶対いいイベントができる」という北島さんの想いがあるからだそうです。

コロナで揺らぐ大黒柱

コロナ禍でイベントの運営が難しくなってからは、年13回開催していた大型イベントでの売り上げがゼロに。そこで、会社の危機を乗り越えるためオンラインショッピングサイト「月刊手紙舎」を開始。

「これまで続けてきたようなリアルのイベントだと、エリアを変えれば、複数回やっても別のお客さんに来てもらえます。でもオンラインでは場所に関係なく同時に接続できるので、年に4回もやったらマンネリになってしまう。それで月刊雑誌が特集を変えていくように、取り上げる作品を変えながら運営すれば良いのではないかと思いつきました」

月刊手紙舎は、毎月7日間だけオープン。ここでは、商品の発送に3週間〜1ヶ月かけるそう。これは北島さんの戦略の一つで、「対応の速さがオンラインショップの良さかもしれませんが、その逆を進むと目立つことができます」と北島さんは言います。

さらに、「順調になってきても安心しない」と気を引き締めながらも、コロナ禍で変化した社会の在り方も、今は前向きに捉えているそうです。

「本質的にはオンラインでもリアルでも、大切にしているものは同じです。作家さんが輝く舞台を作って、手紙社が編集して魅せる。この機会に『月刊手紙舎』を一つのオンライン事業として成立させたいです」

オンラインで展開される工夫の一つが、会費制で客さんに手紙社の「部員」になってもらう「部員制度」。部員たちは学校の部活動のようにオンライン上で毎日交流をし、手紙社を中心とするコミュニティの輪がオンラインで広がりつつあります。

コロナ禍の収束後には、リアルな場所での交流が、これまで以上に求められるのではと予見する北島さん。手紙社のローカル化を進め、全国各地で手紙社のスタッフ、部員、作り手が交流できるような場所づくりを目指しているそう。これからは、地域ごとに生まれる「我がまちの手紙社」を目にするかもしれません。

 

自分の本当にやりたいことを、徹底的に

コロナ禍を経て、「会社の軸」ができてきたと話す北島さん。振り返ってみると、創業当時は経営が厳しい時期もあり、手紙社はコロナ禍以前もいくつもの苦しい状況を乗り越えて来たそうです。

「事業で失敗はたくさんあったけど、それを後悔とは感じはないですね。失敗したとしても、思い切ってやった人には必ず何かついてくる。失敗がなければ成功はないと思います。新しく何かを始めるときは、小手先でやるより自分の本当にやりたいことを、徹底的にやっていきたいと思っています」

北島さん夫婦が会員限定で配信しているラジオ番組「北島家ラジオ」は6時半から毎朝配信。SNSでの情報発信も毎日欠かしません。

「『やるなら徹底的に』と思っているので、発信もしっかり行っています。手紙社のツイッターアカウントは『更新頻度が多すぎる』と言われることもありますね。でも、そこまで言われてやっとお客さんにリーチしていると思っています」

踏み出せば、きっと何かがあるはず

質疑応答で、仕事とプライベートの割合について問われると、「境目はないですね。大変なこともたくさんあるけれど仕事自体が一番の趣味なので、無意識に常にオンでいます」と話しました。

「完璧に製品作りができたかどうか、いつも自信が持てない」販売に踏み切れないと話す受講者には、

「100%あるいは120%の力を出さなければいけない仕事と、7割ぐらいの力でも大丈夫な仕事ってあると思うんです。限られた時間、限られた体力の中で、折り合いを自分の中に見つけていく作業が必要ですね」

とアドバイス。

創業したい気持ちはあってもなかなか決断ができないと話す受講者の声には、北島さん自身もたくさん悩むと打ち明けました。

「自分の心の声に従う時って勇気が要りますよね。僕もたくさん失敗しています。でも、きっと何か得るものがあるはずだと思って、えいや!と踏ん切る感じです」

北島さんは質疑応答を通して、自身の成功や失敗の経験を交えて、これから創業しようと前進する受講者たちにエールを送りました。