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結城の価値磨き方作戦会議②/むすラボ2018セミナーレポート

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結城の価値磨き方作戦会議②/むすラボ2018セミナーレポート

結城の価値磨き方作戦会議②/むすラボ2018セミナーレポート

これからの地方での仕事の作り方や働き方のヒントを探すための学びの場、むすぶしごとLAB.。2018年度第2回目のセミナーは、販路開拓がテーマ。

「結城の価値磨き方作戦会議」と銘打って行われたこのセミナーは、ファッションの世界に身を置く三名が講師として登壇。

ジャンルを越えたクリエーターが集う「バリカンズ」を主催するスタイリスト岡部文彦(おかべ・ふみひこ)氏、スタイリストやコミュニティラジオ局プロデューサーを経て前橋市議を務める岡正己(おか・まさみ)氏。そして、結城市の老舗紬問屋の代表、奥澤武治(おくざわ・たけじ)氏。

ファッションを軸にして地域を舞台に多様なプロジェクトを実施してきたお二人と、積極的な姿勢で結城紬の新しい可能性を模索している奥澤氏。結城紬をはじめとした古典ファッションを元にした現代ファッションへの転換について、地場産業や地域資源を新しいプロダクトに進化させる可能性について探っていきました。

※実施日:2018年10月28日・会場:奥順 つむぎの館

講師紹介

岡部文彦氏(オカベスタイルラボ代表/VALLICANS主宰)
※写真中央

1976年岩手県生まれ。2000年からメンズファッション雑誌のスタイリストとして活動。2006年からアウトドアファッションに重点をおいてスタイリング活動を始めたことで、様々なアウトドアメーカーとの企画開発に携わるようになる。雑誌GOOUTでは外遊びを研究する連載を持ち、自身では、WEBSHOP「ホームセンターバリカンズ」と農園芸作業着ブランド「HARVESTA!」を運営している。
http://www.okabec.com

岡正己氏(前橋市/市議会議員)
※写真右

1980年生まれ。群馬県前橋市出身、前橋市立第三中学校、前橋市立前橋高等学校卒業後上京、文化服装学院スタイリスト課を卒業後、スタイリスト岡部文彦氏に師事。3年のアシスタント期間を経てフリーランスのスタイリストとして起業。ファッション雑誌、ミュージシャン、タレント、広告などのスタイリストとして活動。2009年、地元前橋を盛り上げるために帰郷。2010年11月、前橋市内初となるコミュニティラジオ局、株式会社まえばしCITYエフエムに開局と同時に入社。以後プロデューサー、事業推進ディレクターとしてラジオを通して前橋にて数々の事業を企画・推進。2017年2月12日、前橋市議会議員選挙で初当選。
http://okamasami.blogspot.jp

奥澤武治氏(奥順株式会社 代表取締役社長)
※写真左
茨城県結城市で111年を超える歴史を持つ製造卸問屋、奥順株式会社の4代目代表取締役社長。本場結城紬資料館「手緒里」館長。本場結城紬卸商協同組合理事長も務め、規制の枠組みにとらわれず、積極的な姿勢で結城紬の新しい可能性を模索。海外にも作品を発表するなど、文化保護と普及に精力を注いでいる。
http://www.okujun.co.jp

今回のセミナー会場は、結城市の老舗紬問屋、奥順株式会社が運営する、「つむぎの館 陳列館」。堂々とした佇まいの建物の中に結城紬が展示され、世界最高の絹織物である結城紬を間近で見ることのできる空間です。

普段はちょっと敷居が高くて入りづらそうな場所ですが、今回はこの場所で、スタイリストと老舗紬問屋社長による、販路開拓、モノづくり、着物のコーディネート談義が行われました。

冒頭では、登壇者それぞれの自己紹介のほか、奥澤社長による結城紬の解説も行われました。「結城紬」という名前を知っている方は多くても、「どんな歴史があるか」「どのように作られているか」「なぜ高価なのか」といったことを知る機会は少ないのではないでしょうか。

また、結城紬という技術や文化を守り、次の世代に伝えていくことの重要性、そして、作り手たちがきちんと生活していける産業にしていかなくてはならない、という課題があることも教えてくださいました。

結城紬に限らず、お客様に対して提供する商品やサービスについて「なぜ価値があるのか」をきちんと伝えることは、独立して仕事をしていく中でとても重要ではないでしょうか。

実は、セミナーに先立って、結城紬に関するレクチャーを奥澤社長から受けていた、岡部さんと岡さん。じっくりと時間をかけて、紬の歴史や文化、現状についての講義を受けていたそうです。

岡部さんは、「紬はスーツのような洋服に落とし込むより、着物から派生したカジュアルなものに落とし込んだり、コートと同じような感覚使える羽織にしたり、という感覚に生まれ変わって行くと面白いのでは」と語っていました。

「結城紬の価値は生地そのものにあると思います。だから、その生地をジャケットにしてしまうと、生地の価値を下げてしまっているのでは、とも感じます。反物を平面的に使う、という、着物の枠を超えずに作ってみるのも面白いと思いました」という意見もありました。素材そのものが持っている魅力や特徴を最大限活用する、というところに結城紬の今後への活路があるのかもしれません。

もちろん、独自の特徴を最大限活かすということは、結城紬に限らず、独自に事業を展開していく上で重要な要素ではないでしょうか。

後半では、ファッションモデルの写真を見ながら、スタイリスト目線から見た着物コーディネートの分析も行われました。

素人目からするとカッコよさそうに見える写真も、「ハットやブーツの組み合わせはどうか」「着物の記事としての価値が保たれているか」「粋かどうか」といった、プロならではの目線と、豊富な知識や経験からの分析が行われました。参加者も、これから着物を生活に取り入れていく中での参考になったのではないでしょうか。

セミナーの最後は、参加者からの質問で締めくくられました。「結婚式の時に花嫁として結城紬を着れたらいいなと思っているのですが、晴れ着ではないのでどうしようかと思っています」という質問に、奥澤社長は

「この辺では、農家の方が結城紬の無地や縞でお嫁に行く、というのが当たり前な時代もありました。いま結婚式場などで華やかにやる時代に、結城紬の無地を着て結婚式に出てもいいんじゃないかと思います。ただ、帯は華やかにしたほうがいいですね。できれば背中に紋を入れて。で、一言、私は地元結城が大好きなので、今日は結城紬の無地を着させてもらいました、というふうに、思いをしっかりと伝えれば良いと思います」

と答えてくださいました。