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2017年度むすぶしごとLAB.第2回「つづくお店の作り方」 セミナーレポート

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2017年度むすぶしごとLAB.第2回「つづくお店の作り方」 セミナーレポート

2017年度むすぶしごとLAB.第2回「つづくお店の作り方」 セミナーレポート

これからの地方での仕事の作り方や働き方のヒントを探すための学びの場、「むすぶしごとLAB.」。

2017年のセミナー第2回目では、「カレーの大原屋」の経営をはじめ、「お仕事エンタメ化プロデューサー」「ネット活用アドバイザー」「KDDIウェブコミュニケーションズ主宰「JimdoCafe信州」代表」など、多方面で活躍している尾沢あきら(おざわ・あきら)氏が登壇。

「つづくお店の作り方」をテーマに、カレーの大原屋を立ち上げ運営していく中で実際に尾沢氏が行ってきたこと、経験してきたことを中心にお話いただきました。

 

講師紹介

尾沢あきら氏(大原屋コミュニケーションズ 代表)

専門学校で放送芸術・制作を学ぶ。広告代理店を経て、テレビ・ラジオ・コンサート・イベント制作とレストランビルを経営する企業にて、番組制作・アーティストマネジメント・コンサート企画・店舗運営全ての部署を束ねる企画室で室長を務める。運営母体が解散した事をきっかけに飯田市へUターン。2007年3月、カレーの大原屋をオープン。「出張カレー」と呼ぶ独自のイベント出店スタイルで全国的にも知名度を獲得するとともに、開発した自店のオリジナル商品を継続的に販売。「人の循環による地域活性化」を掲げ、企業・店舗のプロデュース、ネット活用のアドバイスおよび商品開発のプロデュースも行っている。カレーの大原屋店主/お仕事エンタメ化プロデューサー/ネット活用アドバイザー/KDDIウェブコミュニケーションズ主宰「JimdoCafe信州」代表。

 

セミナーの様子

長野県飯田市という、新幹線の通らない山と峠と谷に囲まれた地域から、はるばる足を運ばれた尾沢氏。片道7時間の長旅の疲れを感じさせない朗らかな雰囲気でお話しくださいました。

今回ご登壇いただいた中では、夢のある話だけでなく現実的なこともしっかりと話してくださいました。内容も、ご自身バックグラウンドや企業・経営の話題にとどまらず、「うまくいったこと」「失敗したこと」「ネット活用」など、セミナー2時間の中にもりだくさん。

できれば、尾沢氏にお話しいただいたことをすべてお伝えしたいところですが、本レポートでは、セミナーの中でもとくにお伝えしたい部分をピックアップしてお届けさせていただきます。

 

トーク内容:上手くいったこと

①カレー専門店にしたこと
尾沢氏:事業内容の選択と集中です。できることが様々あれば、その中の一番に絞ること。これはぜひ、皆さんにもやってほしいと思います。

②オリジナル商品の開発
尾沢氏:通常の店販売り上げに加えて、お土産に買って帰ってもらえるような商品も開発しています。これは「客単価の向上」だけでなく「口コミツール」になったりします。

インターネット上に情報があること、さらにオリジナルの商品があることを、私は「分身の術」と呼んでいます。自分が営業していなくても、誰かがネットの情報を拾ったり買っていったお土産の口コミをしたりして、告知周知をしてくれます。

③積極的なイベント出展
尾沢氏:イベント出展もけっこうやります。近場はもちろん、遠いところだと静岡、東京、名古屋、京都など。行ける範囲で、大赤字にならなくて、何かしらそこで新たな繋がりがみとめられそうであれば、積極的に外に出て行っています。

地方の人って、「来てくれるといいな」「こうすれば人が来てくれるんじゃないか」っていう議論はたくさんするんですけど、「来てくれる人のことを知りに行こう」とはしないんですね。

なので、私は「来てくれる人」の地域に、「知りに行き」ます。

 

トーク内容:失敗したこと

①こんな立地で出店したこと
尾沢氏:最大の失敗は、「こんな立地で出展したこと」。みなさん、出店は極力良い立地でやりましょう。私みたいな立地で始めるのは、なんとかする手法はありますが本当はよくないです。

創業11年目、食べログ一位獲得、全国的知名度を獲得した店舗のオーナーにもかかわらず、「こんな立地に出店したことが最大の失敗」と語ります。

尾沢氏:私は都市を見るときに、人口ではなく人口密度を見ています。1平方キロメートルあたりの人口は、ざっくりとした計算ですが 結城市は776人。飯田市は159人。

結城市の隣は隣町がありますが、飯田市の街の隣は、山脈か峠か谷。隣町の人に来てもらう、というのがけっこう難しいですね。

大原屋がある場所よりも結城市のほうがだいぶ有利です。人口は少ないですが、近くに5倍の人がいますし、隣に町がありますからね。

②店舗名のキラキラネーム
尾沢氏:キラキラネームを付けた当人としての満足度は高いかもしれませんが、そういう名前は読めません。よめない、かっこいいけど全部ローマ字、といったネーミングありますよね。

実は、うちのお店も、「カレーの大原屋」という屋号ではなく「麓のカレー大原屋」でした。お店の立地を表現したいという、私のキラキラした思いが詰まった名前で始めました。ですが、「麓(ふもと)」という字は人生でそんなに書かないですよね。みなさん読めないんです。

③手書きの伝票整理
尾沢氏:手書きの伝票整理。当初はカミさんがやってくれたんですけど、伝票整理でまいってしまって。

もうこれはやっていません。いまはクラウドの会計ソフトにしています。これから起業する方は、会計はぜひクラウドでやりましょう。

 

ネット活用と情報発信

尾沢氏は、はやくからインターネットを積極的に活用。店舗オープン前から、自分が独立開業しカレーのお店を始めることはWeb発信していました。

尾沢氏:いろいろな言い訳をしてネット活用に取り組まない人がいますが、それは始まる前から終了していると思います。なので、送受信を責任もってやっていく覚悟が絶対に必要だなと思います。

ネットに一切情報が無いけど流行っている、というお店も存在しますが、これから作るお店の場合、「ネットに情報が無い」ということは、今の人から言わせれば「そのお店が存在しないのも同然」の時代です。

これからお店をやっていこう、という方は、お店開業する前から「公式サイトがある」「SNS運営が始まっている」ということがあってもおかしくない時代は来ていると思います。

店舗情報をはじめ地域の情報を発信することは、尾沢氏が積極的に行っていること。「絶対いなくならない、市外からやってくるお客様に対する情報発信が少ない」というのが、尾沢氏が飯田市の情報発信に対して抱いている感想。

尾沢氏:行政ができないんだったら俺が発信していこう、ということです。その地域ごとに活動している様々な業種の人が地域の価値を発信していく、というのを、ぜひやっていってほしいなと思っています。

これは自分のためにもなるし、その地域に足を踏み入れていった人達への価値にもなります。だから、これを主体的に積極的に発信していく、ということを、情報発信担当のかたは心掛けてほしいなと思っています。

たとえば、飯田市の観光スポット風越山(かざこしやま)。の情報。Web検索で「風越山」と調べると、「カレーの大原屋」が運営するブログが検索結果のトップに出てくる。その結果、本来なら飯田市の観光課に行くはずの問合せが、尾沢さんのところに来るのだそうです。

尾沢氏:本当は、行政がもっと担うはずだったはずの「地元の価値に関する情報発信」がなされていない。なので、私が代わりにやっています。

また、スマートフォンアプリ「Pokémon GO」が流行りだしたころ、自社ブログで「飯田市でポケモンGOをプレイするならどこが最適か?」という記事を公開。その結果、「飯田市 ポケモン」でWeb検索すると、こちらも尾沢さんのブログがトップに来るようになりました。

尾沢氏:結局これは「人が動く」ということじゃないですか。去年の夏なんかは、普段いなかったような人がスマートフォンを持って街を歩いている。普段、うちの店の前は人なんて歩いてないんですよ。

普段いない人たちが歩いているのを見たとき、「これはうちにも関係があるし、この地域に住む人と、外からやってくる人にも関係がある」ということに気づきました。

「情報発信・ネット活用」という切り口で考えれば、「見てほしい人がいる情報」を、ぜひとも発信していってほしいと思います。

 

まとめ

尾沢氏からお話いただいた中でも、「上手くいったこと」「失敗したこと」「Webを利用した情報発信」を中心にレポートいたしました。

本レポートでまとめた内容以外にも、セミナーの中では、テナント出店を検討した際のことを例に出した資金計画のつくりかた、起業にあたっての「身体・心・精神」のバランス、尾沢氏がおこなった起業支援の実例などもお話くださいました。

「つづくお店のつくりかた」をテーマに、ご自身の実績から語る説得力ある内容をお話いただき、親しみやすい語り口で様々な実例を紹介してくださる尾沢氏のセミナーは、とても分かりやすかったです。「起業の先輩が語るリアルな情報として」起業準備中の方にとって大きなヒントになったのではないでしょうか。

(取材・撮影・レポート:佐野匠)