REPORT
中小企業診断士 川居宗則氏/実践的な創業計画の策定について
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中小企業診断士 川居宗則氏/実践的な創業計画の策定について
熱意と計画性を両立した創業計画づくりへ
むすぶ しごと LAB.は、第一線で活躍する経営者や専門家をお招きして自分らしい仕事のつくり方や働き方のヒントを探る実践的な学びと交流の場です。
2025年の第3回講座では、日本政策金融公庫の一ノ瀬祐氏、茨城県信用保証協会の萩谷良彦氏、中小企業診断士の川居宗則氏の3人にご登壇いただき、創業期に知っておきたい創業支援や創業計画を策定の注意点を聞きました。
日本政策金融公庫 一ノ瀬祐氏
金利も考え見合う融資の活用を

日本政策金融金庫は、全国に152支店(県内は3支店)あり、創業期の事業主や既存事業主の金融融資をしている国の機関です。
日本全国の中小企業のうち、およそ3社に1社が利用しており、融資数が多いのが特徴です。
また、全国の商工会議所や民間の金融機関、信用保証協会などいろいろな団体と連携しており、充実したサービスの提供を図っています。
融資を受けることで事業者は、創業資金が貯まるまで待たずに早く事業を開始できます。しかし、やみくもに借りるのではなく、金利も考えた上で「自身に見合うか考えて融資は活用いただくもの」と一ノ瀬氏は指摘。計画性の重要さを訴えました。
日本政策金融公庫は、「新規開業・スタートアップ支援資金」をはじめとした創業融資に力を入れています。創業する人に対して条件を満たしていれば、「無担保・無保証人で融資を受けられる」「利率を一律0.65%(雇用拡大を図る場合は0.9%)引き下げる」「事業が軌道に乗るまで最長20年の返済期間を延長する」といった手厚い支援を受けることができます。
このほか、商工会議所に入会し、経営指導を受けることなどで小規模事業者に有利な融資を受けられる制度もあります。
一ノ瀬氏は「一番良いものをご提案するように心がけているので、安心してご相談ください」と呼びかけます。実際の手続きは相談ダイヤルやオンラインでも受け付けるほか、近くの商工会議所に相談して担当者につなぐこともできるそう。「商工会議所の方にお声掛けしてみてください」と話しました。
茨城県信用保証協会 萩谷良彦氏
創業者に有利な融資制度の活用を

信用保証協会は、中小企業や小規模事業者が金融機関からお金を借りる際に保証人となる公的機関です。融資を受けた人が不況や自然災害などの影響で返済が難しくなったとき、残った債務を金融機関に返済する役割を担っているため、金融機関が創業者に融資しやすい仕組みになっています。
創業者向けの保証制度について、主に2つの支援制度があります。一つは茨城県創業支援融資、もう一つは茨城県女性・若者・障害者創業支援融資(女性、35歳未満、障害者が対象)です。
どちらも茨城県の融資制度で、創業予定の人や創業5年未満の人を対象としている制度。それぞれの制度に1号と2号があります。
2号はスタートアップ創出促進保証では、法人の経営者が保証人にならずに融資を受けることが可能です。
融資制度のポイントとして、融資限度額が誰でも最大3500万円で、融資利率が年1.3%〜1.6%と低金利で利用できる点を挙げました。加えて、「保証料の補助もかなり手厚い」と萩谷さんは説明しました。民間の金融機関でも、独自の融資制度があります。そこでは審査のスピードが早く手間もかからないという利点がある一方、金利が高くなるケースもあります。茨城県の制度では基本的には2%未満で資金を調達できるため、萩谷さんは「ほかにできない制度になっている」と話します。
事業者のステージに応じた支援メニューもあります。「創業する人には有利な県の制度をご用意していますので、資金調達のご相談があれば、ぜひご連絡ください」と呼びかけました。
中小企業診断士 川居宗則氏
創業計画書は進捗確認の“ものさし”
川居氏は、創業計画書について「自分の考えを整理するもの。小さい事業だからいらないということはない」と創業期におけるその重要性を説明。小さい事業ほど景気変動の影響を受けやすいことから、リスクに備えてしっかり作成する大切さを訴えました。作成の際には「金融機関に対して数字で語れること、数字の裏付けがある説明をできないといけない」と熱意だけでなく、「売上に結びつく数字」の重要性も強調しました。
また、「創業計画書は、進捗を知るために『ものさし』になる」と川居氏。金融機関から資金調達をするためだけでなく、事業の軌道修正をするための道具でもあると説明しました。また、「金融機関はまず相談がないと伴走支援ができない」とし、金融機関にもその進捗を報告することで、相談できる関係性づくりができるとアドバイスしました。
川居氏は、創業したての事業者がつまづく理由として「資金繰り」「売上が上がらない」といった内容が多いと指摘。このような課題を回避するためにも、「損益分岐点」を理解することが大切と話しました。
損益分岐点は、この金額を下回ると赤字になるというポイントです。この損益分岐点は、「金融機関から必ず確認される重要なポイント」と強調。金融機関からは、仕入れなどの「変動費」とともに家賃や光熱費など「固定費」がどの程度になるのか問われます。川居氏は、この固定費が払えなくなると「利益があっても経費がまかなえなくて赤字になる」と指摘。赤字を回避するためにも、できるだけ「人件費や家賃などの経費は最初は抑えて、スモールスタートが良い」と話します。この際に、「トントン」になる損益分岐点をしっかり把握していないと、黒字の計画をつくれなくなります。「頑張っているのに赤字なのは、経費が高いから。ちゃんと計画を立てましょう」と呼びかけました。
普段から現金の流れを把握して
資金繰りの仕組みとして、現金ベースのお金の動きを把握することが大切です。川居氏は「毎日の現金の動き、毎月の現金の動き、そしてそれが年間でどうなっているか把握しないといけません」と話します。
川居氏は「掛け売り」に関しても注意点を説明しました。飲食店を経営している場合、クレジットカードで支払いを受けると、入金までに時間がかかるように、「掛け売り」ではその月に売上は上がっても、キャッシュが入ってくるまでに時間差があります。
代金回収が遅く手元資金がなくなってしまう黒字倒産と言われるケースを避けるためにも、「経営者は、お金が入るタイミングと払うタイミングをしっかり見ていないといけない」と川居氏は強調しました。このタイミングを把握する方法として、「資金繰り表を作りましょう」と呼びかけました。普段から現金の流れが分かるものを作成していることで、金融機関からの信用も厚くなっていきます。また、「資金繰りが厳しくなってからでは、作成するのは大変。普段から現金の動きを把握できるものを作りましょう」と呼びかけました。
ステップを踏んで資金調達を
川居氏は、資金計画と収支計画についても作成する際の注意点を説明。事業で必要な資金は、創業で必要となる「設備資金」と創業後に日常的に必要となる「運転資金」があります。川居氏は「そのお金をどのように用立てますか」と問いかけます。
一般的に用立て方は、創業者の自己資金と借入があります。創業時に作る資金計画について「何のお金を使うか、必要な資金はいくらか、調達の方法は何かを考え、まずは無理のない計画を作りましょう。必要な資金は借りて、少しずつステップを踏んで資金調達をしましょう」と話します。
金融機関がチェックするのは「借入が妥当か、返済能力があるかどうか」という点です。ケースによって異なりますが、基本的に自己資金が全体の3割程度を占めているのが望ましいと言われています。「この会社は計画的に資金を使っていて返済能力もあるから、この計画なら利益も出る」と思ってもらえる計画が大切です。
利益がどの程度見込めるのか収支計画を作成して説明する際は、「根拠となる部分を作り上げなくてはいけない」と川居氏。返済金と利益のバランスを考えて作成することが求められます。この際、売上の予測の仕方が重要になります。基本的には「客数」と「客単価」を掛け合わせて算出します。
川居氏はお手本となる計画書として「J-Net21の開業ガイドは心強い味方」とおすすめします。これは、中小機構が作成している信頼性が高い情報源。「うまく活用して創業計画を立ててください」と呼びかけました。
事業の特徴を表現するポイントとして、動機が説明できることも重要です。経験と結びついた創業のきっかけは、読み手の掴みとなります。また、「独自の仕入れルートを持っている」といった見通しが立つ根拠があることも説得力のある計画書につながります。川居氏は「熱い思いを、数字ありきのきめ細かい根拠とともに書きましょう」と熱意と計画性が両立した創業計画書づくりに向けてエールを送りました。