REPORT
ラッパー Skaai氏/自分らしさをしごとにする挑戦。多様性を力に変えるキャリア創造
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ラッパー Skaai氏/自分らしさをしごとにする挑戦。多様性を力に変えるキャリア創造
むすぶしごとLAB.は、第一線で活躍する経営者や専門家をお招きして自分らしい仕事のつくり方や働き方のヒントを探る実践的な学びと交流の場。2025年度第2回目の講座では、ラッパーのSkaaiさんにご登壇いただきました。
Skaaiさんは、中国系マレーシア人の父と韓国人の母を持ち、アメリカで生まれ、物心つく前からさまざまな国を行き来しながら育ちました。大学院で法律を研究していましたが、音楽の道が開けたことをきっかけに中退し、上京。現在はフリーランスのアーティストとして活動しています。
本講座では、Skaaiさんがどのように音楽を仕事に変えてきたのか、その実践的なキャリアの歩みについて語っていただきました。
多文化環境で育つ中での葛藤

Skaaiさんの父親は中国系のマレーシア人、母親は韓国人。2人は日本の大分県に留学生として来ていたときに出会い、Skaaiさんはアメリカで生まれました。
物心つく前から色々な国を行き来する生活を続け、日本文化、韓国文化、中国文化が入り混じった環境で育ちました。「自分の生活の中に、日本、韓国文化、中国の文化が入り混じっているので、とても自然なことでした」と振り返るSkaaiさん。幼少期は違和感を感じることなく過ごしていたのだそう。
しかし、大学に進学し将来について考え始めたとき、転機が訪れます。自分が何を語れるのかと考えたとき、ある気づきに至りました。
「自分は、親が用意してくれたレールに乗る中で培った技術や言語力を、まるで自分が1から築いてきたもののように錯覚していました」とSkaaiさんは語ります。
「自分のキャリアは、レールが特殊だったから人と違っていただけで、本質的には自分の力で全て身につけたものではなかった」という気づきに至ったのは22歳の頃でした。
言葉との出会い、ラップという表現

もともと音楽が大好きだったSkaaiさん。
ヒップホップとの出会いについて、こう語ります。
「ヒップホップは、その人自身の言葉で語っているという感覚があり、『この人にしか言えない言葉』に惹かれました」
実際に自分でラップを作り始めたのは、コロナ禍がきっかけ。「時間ができてしまったので、本当に気まぐれで始めました」と当時を振り返ります。
Skaaiさんは自らのスタイルを、「フリースタイルでやれと言われてもできないんです。でも、ある程度ルールがある上で暴れることはできる。決まっているルールと、自分の独創性とのバランスで勝負することは得意なんです」と語ります。
その後、ABEMAで配信されていたオーデイション番組『ラップスタア誕生!』に出演し、4000人の応募者の中からベスト8まで進出。
この番組での経験が、Skaaiさんの人生を大きく変えます。
大学院を中退して音楽の道に進むことを決めたとき、当時は助教授になる話もありました。親も満足している状況で音楽の道を選ぶことを伝えたとき、親からは意外な言葉が返ってきたのだそう。
「子どもが好きなことを見つけて、やることが親としては1番幸せ、と言われたんです」
親は一貫して「自分で選んでほしかった」という思いがあったそうです。
音楽を”しごと”にするということ

音楽が仕事になると思ったのは、「明らかに仕事がたくさん来るようになり、これはやらなきゃいけない」と感じるようになってからだとSkaaiさんは語ります。
そして仕事として音楽を続けることについて、Skaaiさんは継続の重要性を強調。
「継続してやっていく中で、2年目から3年目に行くときにどういう立ち位置になりたいかを考えなければいけない。継続できないものは意味がないと思います」そして「今は仕事をたくさんいただいている。でも、そのあともらえなくなる時期もあるかもしれない。そういうときに、どうやって踏ん張れるかが大事です」と語りました。
アーティストとしての自己認識について、Skaaiさんは明確な考えを持っています。
「自分は人間でもあって、経営者でもあって、プレイヤーでもあって、商品でもあります。そう考えると、この『商品』にどれだけ需要を生み出すかが、アーティストの仕事だと思います」
収益については、ライブ、グッズ、音楽配信サービスなど複数の収入源があると説明します。ミュージックビデオについては「作るだけでは赤字だし、投資になってしまう」としながらも、「この曲のビデオはこの時期に出さないといけないという計画であれば、それは戦略的な投資になる」と語ります。
チームとともに価値を創る

自分らしい表現と「ビジネスとして売ること」のバランスについて問われたとき、Skaaiさんは段階的な考え方を示しました。
「自分の生い立ちや色々なバックグラウンドを経て、自分にしか言えない問題提起をする。それが、自分にしかできない表現でありクリエイティブです」そして「それが、このシーンや社会において、どれだけ価値があるものなのかを証明するのが、売ることだと思います」と続けます。
ここで重要になるのがチームの存在。「大事になってくるのは、チームの存在。誰が常に自分の隣りにいるか。自分がライブをするときは、この人は絶対必要だと思える人たちがいる。そういうチームが必要です」Skaaiさんは現在、音楽家3人でシェアハウスで生活しており、建物の中にはスタジオもあるのだそう。「友達が仲間を呼んできて、そこから新たな繋がりが生まれていきます」と、自然な形で広がっていくネットワークの重要性を語ります。
ビジネスにおけるチャンスについて、Skaaiさんが持つ考えは明確。
「狙わないと偶然も巡ってきません。狙うことが大切だと思います」
例えとして武道館を挙げ、「武道館を狙っていると、自分なりの道筋がある。それに向かって動いていると、偶然会った人が実は武道館のPAをやっている人だった、などつながりや展開が舞い込んでくると思います。自分が向かう先を狙わないと、巡ってこないですね」と語ります。
続けるということ

活動を続ける上での壁について聞かれたとき、Skaaiさんは「続けることそのものが壁」と答えました。
しかし、「まだ壁だと思っていませんし、続けるのは当然だと思っています。そして苦しいのも当然。でも、『自分はかっこいいことをしている』という自信がすでにあれば、壁も壁じゃないように感じられます」とも語ります。
数字との向き合い方についても率直。「数字はもちろん見ます」としながらも、「再生回数に関しては、それほど重要ではありません。自分が好きなアーティストでも、本当にかっこよくて、誰もやっていないような魅力的な曲を作っているアーティストでも、再生回数は100から1万台なこともあります」
ただし、「ちゃんと見ないといけない数字はあります。生活できなかったら元も子もないですし、ライブの動員数はちゃんと狙っていかないといけません」と、戦略的に見るべき数字を意識しています。
生活リズムについては、「休むことが1番のモチベーション管理です。常に物理的に動いているとどんどん崩れていくから、ある程度しっかり休むことが大事です」と語りました。
質疑応答で出された「仕事引き受けるかどうかの基準は?」という問いに対して「1番大事なのは、リスペクトがあるかどうか」「自分ではない人の方ができそうな仕事は、基本的にやりたくありません」と明確に答えています。
聞き役の結城商工会議所・野口からの最後のまとめが印象的でした。「成功している人は、誰かの期待ではなく、自分自身の意思で人生を選んでいます」「Skaaiさん自身が示してくださった、生き方そのものがキャリアであるという姿勢。学びや経験、葛藤や挑戦、その全てが今のSkaaiさんのキャリアになっていて、結果として自分らしさという武器が仕事の形になっていると思います」
Skaaiさんの言葉と行動は、地方で新しい仕事を作り出そうとする人々にとって、多くのヒントを与えてくれるものでした。